信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

山寺のやきもち踊りの習俗 踊りが終わると我先にと走り出す

県選択無形民俗文化財 【伊那市】

由来・次第

 やきもち踊りが始まった年代ははっきりわからないが、歌詞から推察すると、近江か伊勢付近のものを、伊勢詣りに行った人たちが習ってきて、それを毎年お宮の例祭に踊るようになったものではないかといわれている。かつては、村の有力者が「当屋」になってやっていたようであるが、明治20年頃青年会ができて、それから青年会が主宰してやるようになり、現在は氏子総代や保存会員が一緒になって踊っている。
 4月の例祭に、伊那市山寺区白山社八幡社合殿前庭の大ケヤキのもとで行われる。例祭の儀がすむと、一同が紋付羽織・袴・白足袋で着席し、新旧当屋を中に囲んで引継ぎ式を行う。引継ぎが終わると、酒盛りとなる。唄い手4人が、中央に2人ずつ向き合って座り、踊り手は、これを囲んで円座をつくる。濁酒・肴・煙草・煙草盆を配り、皆はキセルで煙草を吸い、酒を飲み、肴を食べ酒盛りをする。これが終わると、踊り手は立って、踊る用意をする。踊りは、前踊・中踊・後踊の3回に分けて踊る。踊り終わると、皆は先を争って鳥居の外へ走り去る。これに遅れると悪い疫病にとりつかれるとされている。
 やきもち踊りの曲調は古雅であり、踊りが素朴で、手を挙げ、足の裏が見えるほどあげてはねる。この踊りをやきもち踊りといっているのは、歌詞の一番の「やきもちがはらんで」という言葉があるからではないかともいわれている。

(写真 山寺やきもち踊り保存会)

●開催日/4月15日に近い日曜日
●開催地/伊那市山寺区上村 白山社八幡社合殿

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