信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

刈谷沢神明宮作始め神事 雪を投げつけ豊作を祈願

県指定無形民俗文化財 【筑北村】

由来・次第

 お田植祭とも呼ばれる刈谷沢神明宮の春祭りの神事で、かつては毎年3月9日に、農耕の開始に先立ち、豊かな稔りを予祝する田遊び行事として行われてきた。張子の牛を引いて代掻きの所作をし、参詣者が牛をめがけて雪を投げつけるという、素朴でありユーモラスな祭りである。
 この神事がいつから行われていたのかは明確ではないが、神事に登場する牛の模型が、小笠原領主から奉納されたと伝えられていることや、祝詞の中に青柳氏から貢物を多く献上され、「誠に目出度(めでた)き御代にて候」と奏上されているところから、400年前頃に始まったものと考えられている。
 お作始めの神事は、神楽・獅子舞の後、五穀豊穣と子孫繁栄を祈願して拝殿前で催される。張子の牛を導き手綱を取る太郎、万鍬(まんが)を握り代掻き作業の仕草をする次郎が続き「毎年毎年やでござる」と言いながら御代田の式場をめぐる。外神主(区長)の祝詞奏上と「アラ、目出度いなー」の掛声により、産霊(むすび)の神木、鍬、鋤をもった付人もあとに続いて式場を3回まわる。周囲の参詣者は付近の雪を牛に向けて投げつける。これは田植えの時、水不足にならないようにとの神への祈りを意味するものである。やがて、神前に供えてある供物が参詣者にほどこされて豊作を祈る神事が終わる。

(写真 カシヨ株式会社)

●開催日/3月9日に近い日曜日
●開催地/筑北村坂北 刈谷沢神明宮

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