信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

仁科神明宮作始め神事 稲作りのしぐさをユーモラスに演じる年占の神事

県指定無形民俗文化財 【大町市】

由来・次第

 仁科神明宮春祭りにあわせて行う年占の神事で、一年の豊作と健康を祈願するもの。神事の起源は、はっきりとわからないが、文献から遅くとも400年余りさかのぼる室町時代末期には行われていたことがわかる。かつては、旧暦2月9日の祈年祭(としごいのまつり)に実施していたが、明治6年(1873)以降は3月15日へ移り、現在に至っている。
 3月15日の午後、本祭りの神事として作始めの神事が奉納され、鍬始めから苗代づくり・種蒔き・鳥追いまでの稲作りの模倣が、神楽殿内を坪の広さに仕切った中で行われる。二人で組になって稲作りのしぐさを、素朴な仕方で、しかもユーモラスに演じていく。これは農家の人々が今年の作が良い出来であるようにと祈り、また稲の作柄として早生、中生、晩生のどれが良いかについて、神のお告げを神主を通じて伺うものである。
 種籾を桶に入れ、宮司が称事(となえごと)を奏上して、台面にうちつける。早生、中生、晩生と3回行い、その音のよしあしで豊凶を占う。最後に小鍬、茅(かや)、斎串(いぐし)を次々投げ、参詣者は競ってこれを拾う。小鍬はモグラ除けになり、茅は箸として稚蚕の掃立・管理に使うと大当たりし、斎串は田畑に立てると虫除けになるといわれている。

(写真 大町市教育委員会)

●開催日/3月15日
●開催地/大町市社(やしろ)宮本 仁科神明宮

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