ふるさとの文化財を守り伝える心

Vol.04 稀少種を守る取り組み 信州川上犬保存会

高原野菜の生産高日本一で知られる南佐久郡川上村。かつて狩猟が盛んだったこの村で猟犬として活躍した川上犬は、小型日本犬の特徴をよく伝える犬種として、大正時代に長野県天然記念物に指定されます。その後、洋犬の流入、太平洋戦争時の撲殺令等により絶滅寸前に追いこまれますが、川上犬保存会の初代会長が、戦時中ひそかに雌雄の川上犬を村外へ預けていたことが絶滅の危機を救いました。
昭和35年(1960)、戦後中断していた「信州川上犬保存会」が復活。川上犬だけの系統繁殖を地道に続け、現在では村内に40数頭、全国で200頭を数えるまでになりました。「生き残った2、3頭からの種の保存は難しく、多くの困難が伴いました。生き物を文化財として守り伝えることは大変ですが、川上犬はそれだけ魅力のある犬です」と保存会長の藤原忠彦さんは語ります。
村内に住む井出静也さんは4頭の川上犬を猟犬として育てています。かつてはカモシカ猟にその特性を発揮した川上犬。現在は鳥猟が主ですが、強靭(きょうじん)な脚力や敏捷性(びんしょうせい)を発揮し、素晴らしい働きをします。飼い主に忠実で、大きな獣にも恐れず飛びかかる勇敢さと、山で迷っても必ず自力で戻る強い帰巣本能に惚れこむ井出さんは、こうした川上犬の特質を守るため、今後も猟犬として育てていきたいと目を輝かせました。
川上村では保存会を中心に、村をあげての保存活動がおこなわれています。村の名を冠する稀少な川上犬の存在は、今後も村の大切な宝となっていくでしょう。


川上犬には
川上村役場に隣接する森林組合中庭の犬舎 ″樹木里(きぎり)荘 ″で会えます(休館日:毎月15日と末日)


井出さんと川上犬(チコ:雄11歳奥、サキ:雌13歳手前)川上犬保存会は現在会員35人

川上犬(南佐久郡川上村)
小型日本犬の固有種。大正10年(1921)長野県天然記念物に指定されたものの雑種化等を理由に昭和40年(1965)指定解除。保存会の努力により、昭和58年、県天然記念物に再指定。秩父山塊のヤマイヌ(日本オオカミ)が猟師によって飼いならされたとも伝えられ、野性的な日本犬の特徴をよく残しています。信州柴犬の一種。

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