長野市の芋井小学校では、毎年、全校児童による「神代(じんだい)桜の集い」を開いています。神代ザクラは、学校から歩いて行ける素桜(すざくら)神社の境内に立つ大きな桜です。満開の花の下、桜の木にまつわる民話を劇で演じたり、写生をして過ごします。
この集いは、平成元年(1989)に始まりました。身近な文化財に親しむなかから、児童たちに郷土を愛する心を育んでもらいたい、という学校と地域住民の願いが込められています。1年生から6年生まで、分校も含めた約80人の児童たちは、神代ザクラの保存会長さんのお話を聞き、桜の保存活動についても学習し、最後には神社の境内をきれいに掃除します。
児童たちが卒業するときには、手元に6枚の桜の絵が残ります。年々の成長が表われたその絵を、大人になって眺めるとき、彼らは何を感じるでしょうか。
故郷の風景が変化しても、ずっと変わらずその場所に根を張り、人々の暮らしを見守っている桜の木。神代ザクラの存在は、この地に暮らす人々の郷土への思いを、これからも育んでいくことでしょう。
素桜神社の神代ザクラ(長野市)
樹齢1,200年以上といわれるエドヒガンザクラの古木。昭和10年(1935)、国の天然記念物に指定。樹勢の衰えが深刻となった平成3年(1991)から翌年にかけて、神代桜保存会の尽力により大規模な蘇生保存手術が施されました。地元住民に愛され、地域のシンボルとなっています。