信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

新野の盆踊り 精霊供養のための古い盆踊りの形を伝える

国重要無形民俗文化財 【阿南町】

由来・次第

 新野の盆踊りの始まりは定かではないが、享禄2年(1529)瑞光院が建立された時、開山祝いに三河振草村下田の人たちが寺の庭で踊ったのを見た村人たちが、年々盆踊りにここで踊るようにしようと、盆踊りが始まったと記録されている。現在のような輪踊りができる前は、新盆の家の庭先で、親類縁者や村人が集まって、精霊を慰めるための踊りをしてまわっていたといわれる。
 新野の盆踊りは8月14日から16日の3日間、夜通し踊る。「高い山」「十六」「すくいさ」「音頭」「おさま甚句」「おやま」を朝まで踊り続ける。17日、東の空が明るくなる頃、市神様の神前で御岳行者の先立ちで和讃を唱え、和讃が終わると、切子燈籠を持ち「ナンマイダンボ」と唱えながら行列を作って進む。この和讃が終わると、踊りはこのときだけ踊られる「能登」に変わる。行列は瑞光院の広場まで行くと、切子燈籠をつぶして積み重ね、その前で行者が呪文を唱え、九字を切り、刀を抜いて道切りの式を行う。花火が上がり、参列者が大声を上げて精霊を送る。花火は、音を発することで隣村へ踊り神を送ってしまおうという行事で、仏教伝来以前の「霊送り」の形が残されているといわれ、古い形の盆踊りともいわれる。最後に切子燈籠に火がつけられ、人々は「秋歌」をうたいながら、うしろを振り向かないでもと来た道を帰る。振り向くと悪霊がとりつくといわれ、人々は秋歌をうたうことにより、秋を早く招いて、悪霊たちにも夏が終わり秋になったと知らせ、悪霊の舞いもどるのを防いだという。

●開催日/8月14日~17日・第4土曜日(うら盆)
●開催地/阿南町新野

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