ふるさとの文化財を守り伝える心

Vol.15 地域の絆 野沢温泉の道祖神祭り

日本三大火祭りの一つに数えられる「野沢温泉の道祖神祭り」。社殿を守る厄年の男たちと火付け役の村人との激しい火の攻防戦が祭りの見所です。野沢温泉の男たちは、この祭りを通じてはじめて真の「野沢の男」になるといいます。
祭りの中心を担うのが「三夜講(さんやこう)」とよばれる42歳本厄を中心にした男衆。木の伐り出しから、社殿の組立、祭りの執行に至るまでを、この三夜講が取り仕切ります。「社殿の上に登れるのは42歳厄年のとき、一生に一度」という意気込みが結束を強くさせ、仕事との両立に骨を折ることを厭わず仲間が集まります。今年42歳厄年の中心で活動した山田善徳さんと笹岡義博さんは「誇りとこだわりを持って祭りに臨みました」と、仲間とともにこの祭りをやり遂げたことを、自信に満ちた顔で振り返ります。
その一方で、厄年の人たちへの負担の大きさを懸念する声もあります。「道祖神祭りは、野沢の人づくりの場。だからこそ、息子たちを祭りに送り出す気持ちで三夜講を村じゅうで支えていく。そうやって、これからもこの祭りを村全体で守り伝えていきたい」と野沢組元惣代の森紀一さん(65歳)は、祭りの今後を見据えます。
地域が一つになり、「伝統文化」を守り伝えていく。それは簡単なことではないでしょう。しかし、伝統文化という地域の財産を地域一丸となり守り伝えていくなかで、地域と人、人と人との強い絆がうまれ、「仲間」というかけがえのない「財産」を得られるのではないでしょうか。

"唄えばつけるさァてば友だちゃ良いもんだ......"
村人の思いが込められた道祖神の唄が、この冬もまた、野沢温泉に響きます。

社殿の組立
社殿棟梁の指揮のもと、三夜講と25歳の厄年の男衆が、すべて手作業で社殿を組み立てていきます。
以前に比べ、林業に従事する人が減ったため、作業は思うようにはかどらないこともあるといいます

「野沢温泉の道祖神祭り」
(平成5年12 月 国重要無形民俗文化財指定)
五穀豊穣、良縁、子宝授受などを祈願し、毎年1月15日に行われる

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