ふるさとの文化財を守り伝える心

Vol.05 柱に込める氏子たちの願い 御柱用材を育てる活動

7年目ごとに一度の大祭「諏訪大社の御柱祭」(平成6年県無形民俗文化財指定)。勇壮な御柱曳行で知られるこの祭は、御柱となるモミの大木の枯渇に直面し、氏子たちによる用材の育成活動が展開されています。
平成10年(1998)の御柱祭の際、上社の社有林「御小屋山」から伐出しができず、下社側の「東俣国有林」から調達。危機感を覚えた上社側では、平成7年(1995)から氏子青年会らが中心となり、御小屋山へのモミの植樹を始めました。下社側でも平成8年に下諏訪町民を中心に「御柱用材を育む会」が結成され、活動の輪が広がっています。
20歳から祭に携わってきた上社大総代会長の五味武彦さん(64歳)は、御小屋山以外の御柱で祭を行なうことについて、「それは淋しいよね。明神さんが柱に宿って山を降りてくる。そうした神聖な気持ちを若い人たちにも引き継いでいって欲しいね」と語ります。植林は平成15年でほぼ終了しましたが、御小屋山からまたモミが出せるようになるには約30年の年月が必要です。伐出す山が変わっても、伐採前には御小屋明神にお参りし、御柱の御幣は御小屋山の方角に向けます。御柱祭の精神が後世に受け継がれていくことが五味さんの願いです。
「御柱用材を育む会」では、平成12年から毎年50本ほどの苗木を東俣国有林に植え続けています。前会長の宮坂源吉さん(55歳)は「これまで御柱山を管理し育てることはあまり意識されてきませんでした。そのツケが来ていると言える。今後は用材のことだけを考えるのではなく、諏訪の山を皆で育てていく。そんな意識改革が必要でしょう」と言い、育成活動が地域の森づくりにつながることを願っています。
御柱祭には信仰とともに伐採・搬出・綱の結び方など林業技術が伝えられ、祭を支えています。柱に込める思いは様々ですが、御柱の山を育み、祭を受け継ぐことは、地域独自の生活や文化を再認識することでもあるのでしょう。

「御柱用材を育む会」による植林作業。周りにはネットを貼り、野生動物の被害から守る。

御小屋山にたたずむ明神さんの祠。古い伐株が神として祀られている。通常の参拝は里に近い祠でおこなうため、ここまで人が立ち入ることは少ない。

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