ふるさとの文化財を守り伝える心

Vol.02 ホタル舞う高原を守るために 長野ホタルの会

志賀高原石ノ湯のゲンジボタルは高原に生息する珍しいホタルです。生息地を流れる岩倉沢川には温泉が流れ込み、水温が比較的高く一定した自然環境と、幼虫の餌となる巻貝カワニナの繁殖に必要なカルシウム分などを提供しています。ホタルの生態は県立長野西高校生物班により昭和57年(1982)から調査され、その特殊性が認められたことから、平成2年(1990)この生息地が県の天然記念物に指定されました。
生態調査とともに周辺の環境整備もすすめてきた生物班の活動は、指導にあたった三石暉弥(みついしてるや)さんが代表をつとめる「長野ホタルの会」(平成5年発足・会員数143人)によって引き継がれています。会員たちは「石ノ湯のホタルは地域だけでなく、県の、そして日本の宝、世界の宝」との考えのもと、毎年春と秋の周辺整備に加え、休日の時間を割いて個々に現場を訪れ、川を清掃し藪を払うなど生育環境を整える作業を続けています。
「水田にホタルが季節の彩りを添えていたのは農家による日々の手入れがあったから。人間の暮らしが自然から離れたことでホタルは生息環境を失ったのです。石ノ湯のホタルも同じで、人間の影響を強く受けるのですよ」と三石さん。
夏の風物詩を求めて生息地を訪れる人たちに対し、地元山ノ内町では観察にあたってのマナーの徹底を呼びかけています。ホタルを守ることは、人間にとって必要な自然を維持することでもあります。地元の努力とともに、私たち一人ひとりの配慮がいま求められています。

岩倉沢川の環境整備作業をおこなう「長野ホタルの会」の人たち

石ノ湯のゲンジボタル生息地(下高井郡山ノ内町)
日本で最も標高の高い場所(約1,600m)に生息するといわれるホタル。成虫の発生期間が5月~9月と長期間にわたり、寿命が長く、発光周期も長いのが特徴です。最盛期は7月中旬~8月上旬。高原の白樺林を飛翔する光景は他では見られない幻想的な美しさです。

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