展覧会の詳細GALLERY
「山とくらし」
栗田貞多男
雪形の北アルプスと田植え(大町市・5月)
春の陽光が水田にあふれる頃、北安曇野では田植えのピークを迎える。残雪の後立山連峰が苗を植えたばかりの水田に白く映り込み、その峰々には爺ヶ岳の「種まき爺さん」、鹿島槍ヶ岳の「獅子と鶴」、白馬岳の「代かき馬」などの雪形が望める。これらの雪形はその土地の農家にとって、田植えの時期を知らせる大切な季節便りでもあった。
初夏の高原野菜畑(上田市菅平・6月)
標高約千メートル。菅平高原の高原野菜畑ではレタスが日一日と成長し、収穫の日を待っている。広大な畑では大型トラクターの散水器が畝に沿って移動しながらくまなく水を撒いていく。
長野県各地の高原では、このようにしてキャベツやレタスをはじめ、ジャガイモ、トウモロコシなどが大量栽培され、毎朝、大都市圏などへと出荷されていく。
タバコ畑の収穫(長野市戸隠・8月)
夏の山村を訪れると時折、背丈ほどに伸びた茎に卵型の大きな葉がたくさん付いた作物を目にする。夏の初め頃には、その頂きに白とピンク色の美しい花が咲いている。
これが葉タバコ畑で、開花直後に葉の成熟のため花芽は摘み取られ、8月に入ると葉の収穫期となる。茎ごと刈り取られ、自然乾燥されるが、たばこ事業法により契約農家だけで栽培されている。
山村の稲刈り(長野市中曽根・9月)
信州には安曇野や善光寺平など全国的にも有名な大水田地帯もあれば、山里の傾斜地形をたくみに利用した棚田もある。そのなかに「田毎の月」で知られる 千曲市の“姨捨”や、飯山市の“福島の棚田”など、各地に名所が知られる。
四季を通して棚田の景観は風情があるが、黄金色に稲穂が染まる初秋はとりわけ美しい。
野沢菜の収穫(野沢温泉村)
奥信濃・野沢温泉村。秋遅く、間もなく霜もやってくる季節。山あいの野菜畑では特産の野沢菜の収穫に忙しい。
高さ1メートル近くにも育った野沢菜は温泉の湯で洗われ、大きな木の樽にしっかりと漬け込まれてゆく。ここ野沢温泉の健命寺では「寺種」と呼ばれる野沢菜の原種が250余年も前から守り育てられてきた。村の家々では代々伝わる漬け方があり、味は微妙に異なり、その食べ比べもまた冬の楽しさである。
遠山の霜月祭り(飯田市遠山谷)
南信濃の遠山谷には、霜月祭りと呼ばれる行事が伝わっている。旧暦の11月(霜月)、年の瀬も近づく頃には太陽の光が弱まり、あらゆる生命の力も衰えるといわれた。霜月祭りは生命の力復活の祭り、新しい年を迎える春迎えの祭りである。
村内の十数ヶ所のお宮では、神聖な水を谷川から運び上げ、本殿のかまどで湯を立てて神々に献じ、自らも湯を浴びる。本祭りは夜を徹して行われ、夜明けまで続き、湯立て神楽を神々に奉り、神々をお送りするという。(国指定無形民俗文化財)
豪雪の山村、雪下ろし(信越県境)
長野県北部の信越国境一帯は世界的な深雪地帯で、下水内郡栄村の森宮野原駅では、昭和20年2月に785センチという積雪記録が残っている。
雪国の民家は、かつては芽吹き家屋が大半をしめていたが、現在では多くがトタン屋根にふき替えられてきた。屋根の勾配は急で雪は落ちやすいが、それでも大雪の後は人々にとって雪下ろしという大変な仕事が待っている。慣れているとはいえ、体力と神経を使う大仕事である。
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