「千曲川」・「天竜川」

「千曲川」・「天竜川」

栗田貞多男

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千曲川源流(川上村)

長野、埼玉、東京、山梨の一都四県にまたがる秩父多摩甲斐国立公園の主峰・甲武信ヶ岳(2,475m)の深い森から全長367キロ、日本一の大河・千曲川の旅は始まる。その源頭は、か細い。ツガの原生林の中から沁み出すように小さなせせらぎが誕生し、ささやかに流れ始める。
小沢は数百メートルも下らないうちにいくつかの沢と合流し、みる間に水かさを増し、白い飛沫をあげ闊達に瀬音を立てる。

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千曲川中流域(長野市)

千曲川は、川沿いにさまざまな風景をみせるふるさとの大河だ。
春、善光寺平を流れ下る川沿いは桃の花に埋まる。一面、ピンク色の果樹園の彼方に飯縄山や黒姫山、残雪の北アルプスまで望めるこのシーンは、春の北信濃を代表する美しい風景だろう。
堤防の内側は桃やリンゴの果樹園や、野菜畑となっている。大雨の時には冠水してしまうが、水が引けば元に戻る。自然にさからわず、川と共に人々は農業と生活を続けてきた。

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信越県境(飯山市・野沢温泉村)

春、県境に近づくにつれ、川沿いには黄色い菜の花が目につくようになる。野沢菜発祥の地、野沢温泉村や飯山市付近では4月下旬、あたりいちめん野沢菜の花に彩られる。
冬、名だたる豪雪地だけに川辺もすっかり雪に埋まる。残照に千曲川は赤く染まり、川沿いのヤナギがシルエットを際立たせる。
カヌーで下る姿もみえる。釣り人も多い。ゆったりと流れ下る千曲川は、四季それぞれの情景をみせてくれる。

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信濃川河口(新潟市)

信越県境を越えると、千曲川は信濃川と名を変える。
米どころ・魚沼郡を北上した信濃川は、やがて越後川口で魚野川と合流する。その源を谷川岳に発し、信濃川の支流としては新潟県内最大の魚野川は、またサケの遡る川でもある。
数千尾のサケが遡上する信濃川は長岡の下流・分水で二分され、一方は新信濃川として寺泊から日本海へそそぎ、本流はさらに新潟平野を潤しながら新潟市に達し、367キロの旅を終える。

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天竜川の源・諏訪湖

全長約216キロメートル。天竜川は長野県のほぼ中央、諏訪湖に源を発し、中央・南アルプス、伊那山地の水を集めつつ伊那盆地を南下し、天竜峡から静岡県境を抜けて太平洋・遠州灘へそそぐ。
諏訪湖は海抜760メートル。冬の寒さは厳しく、全面氷結した氷が盛り上がる“御神(おみ)渡り”でも知られる。ワカサギを始めとする淡水漁業もさかんで、湖畔には温泉も多い。

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天竜川交流(南アルプス・三峰川)

広大な伊那谷のほぼ中央をゆったりと天竜川は流れ下る。しかし、三峰川、小渋川や太田切川始め左岸の南アルプス、右岸の中央アルプスからの交流は急で、水量も多い。時には大雨や台風等により大出水し、“荒れ天竜”としても知られてきた。
本流の両側にはこれらの砂れきが何層にも滞積し、みごとな河岸段丘となり、市田柿やリンゴなどの果樹栽培も広く行われている。

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天竜峡(飯田市・静岡県境)

伊那谷をおだやかに南下した天竜川は、飯田市南部の天竜峡から一気に激流へと変化する。両岸の山は押し迫り岩屏風さながらの景観を見せ、V字形の谷合いを岩を咬み白い飛沫を上げ、怒涛のように奔流は流れ下る。
船頭がたくみに操る木船で下る“天竜川下り”は、そのスリルと爽快感から人気も高い。

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天竜川河口(静岡県浜松市)

静岡県へと入った天竜川は、日本のダム建設史に残る偉業といわれる佐久間ダム(1956年完成)や秋葉ダムを抜けると東海道の平野部に到り、広大なデルタ(滞積地帯)をつくっている。一帯には浜松市を始めとする産業都市が活況を呈している。
早朝、河口の砂浜からは太平洋の水平線から昇る日の出がのぞめる。漁師の投網が朝陽に輝く。

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