信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

遠山の霜月祭り 神々に湯を献じて生命の復活を祈る

国重要無形民俗文化財 【飯田市】

由来・次第

 遠山の霜月祭りは遠山地方(飯田市南信濃、飯田市上村)に伝わる湯立神楽。この湯立神楽は、最も太陽の光が弱まりあらゆる生命の力が衰えるといわれる旧暦11月に、諸国の神々を招いて湯を立て、湯を献じ、自らも浴びることによって神も人も生まれ変わるという信仰を伝える祭りである。
 上村や木沢では、江戸時代初期までこの地を領有した遠山氏の鎮魂の儀式が加えられて伝えられ「死霊祭り」「遠山様の祭り」などともいわれる。
 祭りは、本殿の前の舞い処の土間に湯釜をすえ、その上に湯の上飾りを吊るし、行事はこの釜のまわりをめぐって行われる。前日、祭りの準備を一切整え、かまどに火を入れ、宮を清めて宵祭りを行う。
 本祭りは、午後になって始まり、夜を徹して行われる。祭りは湯の上飾りに神々を迎え、ここで湯立神楽を神々に奉り、終わると神々をお送りし、そのあと神聖な神々の面をつけたものが現れて、この土地だけの神の祭りを行い、終わるとその神々をお送りするという形をとる。
 祭りは、12月に遠山谷の12カ所(13社)で次々行われる。次第や内容には違いがみられるが、面の構成から大きく分けて、南信濃の和田と木沢、上村の上町と下栗に代表されるあわせて4つのタイプに分けられる。和田タイプは4タイプのなかでも独自性が強いとされ、相違点が多く、別系統の祭りといった雰囲気が強い。

(写真 社団法人信州・長野県観光協会)

≪和田タイプ≫(飯田市南信濃)
●諏訪神社 和田 ...12月13日
●八幡神社 八重河内 ...12月15日
●遠山天満宮 大町 ...12月23日(当分の間休止)
 和田タイプの特色は、舞は隅固めで囃子は太鼓のみ、湯立ては三立、面は三社共有の持ち回り、かまどが五徳であることである。面形の舞では四面(よおもて)がなく、水の王が最初に登場し、最後に猿が登場する。

≪木沢タイプ≫(飯田市南信濃)
●白山神社 上島 ...12月第1土曜日(当分の間休止)
●熊野神社 小道木 ...12月第1日曜日
●日月神社 八日市場 ...12月1日(中立と隔年交替)
●稲荷神社 中立 ...12月1日(八日市場と隔年交替)
●八幡神社 木沢 ...12月10日
●宇佐八幡神社 須沢 ...12月16日(当分の間休止)
 木沢タイプの特色は、かまどが3つないし2つ。中立、八日市場を除いて本来は石を芯にした土製のかまど。各集落の禰宜が協力しあって開催する。基本的な湯立ては九立。面は各神社の面で25から37面。

≪上町タイプ≫(飯田市上村)
●中郷正八幡宮 ...12月第1土曜日
●上町正八幡宮 ...12月11日
●程野正八幡宮 ...12月14日
 上町タイプの特色は、かまどは松材を芯にした土製。本来は毎年造り直す。かまどは2つ。本来基本的な湯立ては九立。祓い言葉による儀礼が発達している。舞は五方。特別な儀礼を伴う役湯とそうでない湯立てがある。面の中心をなすのは遠山一族といわれる八社の神である。天伯は弓天伯。湯切りをする火伏せ・湯伏せ面と火おこし面が二面ずつある(四面)。

≪下栗タイプ≫(飯田市上村)
●下栗十五社大明神 ...12月13日
 下栗タイプの特色は、三太夫を中心とした7人の禰宜が、儀礼や湯立てを行う。かまどは五徳の2つ。面は39面あり、十五社大明神と津島天王社の2セットからなるものが多い。湯立てに先立つ印・呪文を唱える儀礼が非常に発達している。基本的には木沢タイプと共通するが独自性が強い。

●開催地/飯田市南信濃、飯田市上村

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