信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

湯原神社式三番 五穀豊穣への祈りが込められた古風な所作の舞

県指定無形民俗文化財 【佐久市】

由来・次第

 湯原神社の式三番(しきさんば)は、同神社の秋季大祭で、天下泰平、五穀豊穣、子孫繁栄を祈って奉納される。この芸能の起源や伝播経路は未詳だが、宝暦4年(1754)の「御祭礼踊将束諸道具物数覚」の記録などがあり、この頃には既に行われていたことが示されている。余興的芸能ではなく、神意を慰めるための神事芸能であり、重要な祭事の一環として奉納されるもので、豊凶にかかわらず大戦中にも1年も休まず上演されてきた。
 式三番は、能の「翁」を基調とし、狂言や田楽等を加味して神事芸能としたもので、地謡も楽器等の用具も能の形式に準拠している。湯原神社の式三番はその本格的な様相をよく伝えており、古典的な風格のある芸風を厳正に伝承している。
 式三番には、翁(白色尉)、千歳、三番叟(黒色尉)の3人が登場する。演技の次第は「翁の舞」「千歳の舞」「尉の舞」「揉出の舞」「鈴の段」となっている。「翁の舞」は荘重、「尉の舞」は軽快な舞で対照的な演技である。「鈴の段」は三番叟が鈴と扇を持って舞う。地や空にいる邪鬼悪霊を祓い押さえ、里人に危害を与える邪神を追い散らして五穀豊穣を祈る。
 神人一体の境地で狂わんばかりに舞う湯原の式三番は、古代の鎮魂(たましずめ)祭にみられたタマフリの流れを継承するようで、神がかり的呪術的所作の舞はタマフリの所作を垣間見るようでもあり、その足さばきは魅力的である。

(写真 佐久市教育委員会)

●開催日/9月最終日曜日
●開催地/佐久市湯原 湯原神社

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