信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

野辺の来迎念仏 念仏と獅子を融合させた民俗芸能

県指定無形民俗文化財 【須坂市】

由来・次第

 須坂市野辺の来迎念仏は別名「四度(よど)の念仏」「獅子念仏」とも呼ばれる。四度の念仏というのは、春・秋彼岸と盂蘭盆(うらぼん)、11月の十夜念仏の四度に行われるからであり、獅子念仏というのは、念仏の途中でシカを模した雄雌二頭の獅子があらわれて念仏獅子舞を演じるからである。野辺の来迎念仏には念仏和讃と念仏獅子の2つの要素があり、念仏和讃が時宗本来の行儀であって、念仏獅子は後世つけ加えられた念仏芸能であると考えられている。現在口誦されている和讃には、今から千年余りをさかのぼる空也(こうや)和讃の一節や、平安時代の源信僧都による来迎和讃の一部などが残っているが、古い和讃が、文献に残存するだけでなく、実際に歌われている野辺の来迎念仏は全国的にも希少な例である。
 来迎念仏は、念仏講中の人々により野辺公会堂で行われる。講員たちは、床の間の左右に向かい合って座り、全員が太鼓にあわせて鉦を打ちながら和讃を唱える。念仏が盛りあがってくると、獅子が登場する。雄獅子は黄色地に黒の模様の衣装、雌獅子は赤い花模様。好奇心の強そうな雄は念仏の方へ近づこうとするが、心配性の雌が止めようとする。最初はためらって襖の陰に見え隠れしていた一対の獅子が、やがて誘いあって念仏に参加し、太鼓を打って満足そうに帰っていく。
 来迎念仏に付随する獅子舞は全国的にみても珍しい。

(写真 須坂市教育委員会)

●開催日/3月中旬、8月中旬、9月下旬、11月下旬
●開催地/須坂市野辺 野辺町公会堂

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