信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

上今井諏訪神社太々神楽 「故郷」の地に受け継がれる郷土色豊かな神楽

県選択無形民俗文化財 【中野市】

由来・次第

 上今井諏訪神社太々神楽は、神に五穀の豊穣を願って奉納される神楽である。上今井の神楽がいつから行われるようになったのか明らかではないが、神楽に使用される翁面には文政10年(1827)の銘があり、少なくとも江戸時代後期にはこの地で神楽が行われていたことが推察される。かつて神職によって奉納されていた神楽は、明治以降になると氏子たちに伝授され行われるようになった。
 上今井の太々神楽の特徴は、島根県発祥といわれる出雲系神楽の大和舞と明治初頭に岡山県で発祥した近代神楽の吉備楽をルーツとした舞の2種類の舞が伝承されていることである。現在、大和舞11座、吉備楽5座、浦安の舞の計17座が伝えられており、毎年4月の春祭りに十数座が選ばれ奉納されている。扇や鈴鉾、刀などの採物を持ち五穀豊穣を願う大和舞に対し、吉備楽は生活に関する演目が多く、詩に合わせて優雅に舞う。大和舞や吉備楽がどのような経緯で上今井にもたらされたのかは明らかではないが、当地において長い年月の間に伝統的な基本を守りつつ、独自の発展を遂げ、郷土色豊かな神楽に成長した。
 写真は「田植の舞」である。この舞は吉備楽であるが、吉備楽とも、大和舞とも異なる特徴を持っており、上今井のみに見られる田園豊作の舞である。稚児(少女)4人がタスキをかけ、扇を持って清楚に気取らずに舞う様子は大変ほほえましい。

(写真 中野市教育委員会)

●開催日/4月20日に近い日曜日
●開催地/中野市上今井 上今井諏訪神社

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