信州の伝承文化 -長野県無形民俗文化財-

大河内の鹿追い行事 豊作を祈願して鹿を射る

国選択無形民俗文化財 【天龍村】

由来・次第

 春の節句祭りと呼ばれ、旧暦3月3日に池大神社境内で行われる模造の鹿を弓矢で射る行事。種の再生を願い害獣追放を祈る農耕予祝の要素と動物性蛋白質確保のための豊猟予祝の要素が複合した、山地農民の予祝行事と考えられる。また、この行事の中で参拝に来た村人に配られるクワ(鍬形)は、家のえびす棚に供えて一年の豊作を祈願するもので、村人は秋祭りで米を神社に返して収穫を感謝する。
 拝殿で行われる神事では、オシロジ(粢(しとぎ))が供えられ、宮人1人が神前に向かって、五穀豊穣を祈って「順の舞」を舞う。その後、狩人役が拝殿の建つ石垣上で本弓を持って立ち、勢子役2人は棒を肩に担いで下の庭に立つ。狩人が、村境の地名をあげながら鹿の追出しを命じると、勢子2人が分かれて見に行く。しばらくして「行ってみたがおらん」と報告。狩人は「足跡があったと聞いている。よく見てきてほしい」と命じ、勢子2人はふたたび裏山に行くと「あった、あった。足跡があった。それも新しい足跡だ」などと告げる。狩人が「しっかり追出してくりょう」というと、勢子は少し山の方へ入って行き「出たぞう」と叫んで境内に戻ってくる。すかさず狩人が鹿に向かい矢を放つ。
 鹿を射たのを合図に、子どもたちが鹿に駆け寄って、胴の中からハラワタの御供を奪い合う。舌と耳は三方にのせて本殿に供える。ハラワタの御供は万病に効くといわれている。

(写真 天龍村教育委員会)

●開催日/旧暦3月3日
●開催地/天龍村神原大河内 池大神社

▲ページの先頭に戻る